スカイマークはデルタ航空に支援してもらった方がいいんじゃないの?、という話。
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自民党と結託することを選んだ第二のJALことANA
とにかく日本における航空行政の過度な管理には辟易させられる。バカな田舎の国会議員に無駄な路線を開設させられ、アメリカ政府を通じて圧力をかけたボーイングに屈して大量に747-400を買わされたJALはドル箱路線を多数抱えているのにも拘らず、いつの間にか超高コスト経営となり行き詰まった。アジアのハブ空港となる可能性のあった成田空港は当時の時代感もあいまり、その強引なやり口が左翼(新左翼)勢力を煽った結果、国際都市の首都圏にある国際空港としては酷く中途半端な空港となってしまい、いつの間にかその立場を仁川とチャンギに奪われた。
平成の訪れとともに航空行政も緩和されていくかと思いきや、JALの再生の経緯がとにかく気に入らないANAはJALの再上場直前に公募増資を決定*1したばかりか、悪代官と結託する越後屋のごとく自民党に圧力をかけ続けた結果(実績が欲しくて官僚をいじめておけば国民の評判になると思っている頭がお花畑の議員はころっとなびき)、JALの再上場は一時危ういものとなった上に、羽田空港の国際線の発着枠はANAに優先配分された。
国の力を使ってJALを攻撃するANAだが、結局、ANAのかつてのJAL対比での比較的高効率(JALが低すぎただけなのだが)経営は面倒な部分をJALが全て負っていただけであり、彼らの努力だけとは言い切れない。鍛えた翼は強いらしいのですが、そのユニットコストで鍛えてるとおっしゃれるのがすごいですね。
これをJALが会社更生法のお世話になるかどうかのタイミングで流していたのだから趣味が悪いにもほどがある
しかし、うまい話はそうあるわけでもなく、発着枠だけではなく、今度はスカイマークを押し付けられることになってしまった。あれだけJALに投資をするなと迫っていたのだから今更スカイマークを押し付けるわけにもいかない。それに発着枠を金で買ったとも言われたくない。しかも将来的には手放さなくてはならない。つまりANAは今回「慈善事業」をやる羽目になりそうだということだ。しかし、それもこれもANAが政治に接近しすぎた結果であり、最近のANAの下品な経営を見てげんなりしていた私としては「ザマァwwwww」と言いたい気分である。
日本と意外に縁の深いデルタ航空
と書いてはみたものの、縁が深いのはデルタではなく、かつて存在しデルタ航空に買収された「ノースウェスト航空」である。ノースウェスト航空はかの「もく星号」から日本の航空界を支援してきた会社であり、その功績を認められたこともあり、欧米系の航空会社として日本の空港を拠点とした「以遠権」を保有している会社でもある。
その権利を合併時に引き継いだデルタ航空は今でも成田空港を拠点としてアジア各国への航空便を運行している。一方で、デルタ航空が所属している航空系アライアンスであるスカイチームに日本の航空会社は参加していないため、日本国内の便は必ずしもよくないというのが現状である。本来的には、[日本各地域/アジア各国]ー[羽田/成田]ー米国というルートを開設し、日本各地発の便(コードシェア)+以遠権を生かしたアジア各国からの便(自社+コードシェア)を成田・羽田に集約して、両空港を極東アジアのハブ空港として運用し、両空港からの便を米国のハブ空港(デトロイト・ミネアポリス・ポートランド便)につなぐことで、米国-アジア路線の覇権を握りたいところだろう。特にアジアは距離の問題以上に需要の問題があるため、米国各地からの直行便を開設するよりも、ハブ空港(ここでは成田・羽田)に一定の旅客を集めた上で運行する方が効率が良いはずである。おそらくその狙いもあり、デルタ航空はJALの支援者として手を挙げていた。
日本にとっての利益とは何か
日本にとっての利益は成田/羽田に人が集まることである。日本国内への旅客増はもちろんのこと、乗り継ぎでもなんでもヒト・モノ・カネの集まる国際都市としてのプレゼンスを上げることこそが利益であり、もはや世界のエアラインと戦う気力をなくしているJAL・ANAの利益を最大化することではないのは明白である。だとすれば、アジアのハブが欲しいデルタ航空とスカイマークが協働していくのは、こちらにとって全く悪いはないでないばかりか、むしろ航空行政によって破壊し尽くされた日本の航空ビジネスの最後の希望ではないか。
スカイチームには大韓航空と中国東方航空・中国南方航空が加盟しており、極東圏には既に日本以外の主要エリアには拠点を保有している状況である。デルタ航空としてはより加盟航空会社が多く、旅客需要の多い上海をハブ空港とすることも検討しているようだ。
そこで日本に最後に残った希望は件の以遠権である。デルタ航空の保有している以遠権はあくまで日本発着便だ。だとすると、デルタ航空の本音としてはなるべく日本をハブ空港として活用したいが、使い勝手も悪いし、日本国内の便も悪いしで以遠権と天秤にかけてしまうとまぁ上海だろうなぁ・・・というのが現状の検討具合だろうかとは思えるので、もし日本の便がデルタ航空にとってよきものになるのであれば、成田/羽田のハブ空港化へと再度舵を切る可能性があると思っている。
もちろんスカイマーク側にとってみても、ANAやANA系(Air DOなど)で張り巡らされつくした国内線でコードシェア便としてのおこぼれをもらうことしかできないANAによる支援よりも、ANAでもJALでもない第三極としての立場を維持しながら、デルタ航空の乗客の乗り継ぎという新たな需要を見出すことができるデルタ航空による支援の方がよほどよい。ついでに詳細は後述するが、デルタ航空が本腰を入れて成田/羽田のハブ空港化を進めた場合、KLM系(KLM、エールフランス、アリタリア)も成田/羽田を極東アジアのハブ空港として活用する可能性もあり、その場合に米国だけではなく欧州の乗客も狙うことができる。ついでに企業としての体力回復後にスカイチームの日本発アジア域内担当として夢の海外路線への進出もまた夢ではなくなる。
つまり、デルタ航空がスカイマークを支援することは両者にとって利益があるばかりか、日本の国益にも叶うと考える。
もしスカイマークとデルタ航空が協働することになったら
スカイマークがスカイチームに加盟し、デルタ航空が支援することになったとしたら、事としてはデルタ航空の便が増えることだけにはおさまらないだろう。仮に全て事がうまく運んだケースを少し妄想してみて本エントリーの締めとしてみる。
デルタ航空が日本国内各地にコードシェア便を設定。地方に住む人たちの利便性が一挙向上。
現時点で地方の人たちが通し発券で米国へ行こうとすると、ワンワールド(JAL)、スターアライアンス(ANA)で国内乗り継ぎ便を利用するか、大韓航空・アシアナ航空などを利用して海外乗り継ぎを利用しているパターンが多かろう。ここにデルタ航空発券でスカイマーク乗り継ぎという新パターンが生まれる。
デルタ航空が極東アジアのハブ空港として成田・羽田を選択。デルタ航空のアジア各国からの便が成田・羽田に集約される。
デルタ航空の手が回らない分についてはスカイマークがデルタ航空とのコードシェア便として国際線運行を始めればなおよい。
デルタ航空のおかげでスカイチームの極東ハブ空港としての価値があがった成田/羽田空港に他のスカイチーム加盟会社であるKLM系(KLM、エールフランス、アリタリア)も重視し始める。
デルタ航空+スカイマークによってアジア各国への便が充実し、ハブ空港として機能し始めるとKLM/エールフランス/アリタリアも極東アジアのハブ空港として成田/羽田を重視し始める。その結果、欧州各国へのアクセスも向上する他、欧州各国からのアジア行きの旅客が日本を訪れるようになる。スカイマークも国内線需要とアジア域内便の需要を増やすことができる。