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英語力とはいったい何なんだ、という話。

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本の学校教育が間違っているという幻想にすがるわれわれ

最近の日本人の英語の状況を見て、よく「コミュニケーションのための英語」の訓練が足りないだとか、「学校の教育がよくない」とかそういった議論がなされることが多い。確かに中学校・高校の英語教員の質は押し並べて低く、どこかの地方の教育委員会TOEICのテストを教員に課したというのが、図らずも英語教員の質が「そこまで低かった」ということを表している。

英語教員、全員TOEIC受検へ=和歌山県教委 - 教育・文化ニュース[東書Eネット]

Test of English for International Communicationという正式名称からも分かる通り「コミュニケーション」のためのテストとされているので、「コミュニケーション」問題を気にしている多くの日本人には、問題解決の一筋の光のように見える、いや、もはや一筋と信じていることと思う。だが、TOEICの出題範囲とレベルと言えば極めて基礎的なレベルであり、満点を取るのは難しいが900点レベルを取るには全く苦労しないテストだ。英語能力の判定テストとしては(しかも教員が使うようなレベルとして)全く意味のないテストと言って差し支えないのではないか。もちろん、英語ができる人は必ずTOEICのスコアは取れる。しかし、TOEICのスコアは英語能力の最低保障にすぎず、それ以上を判定するための必要条件にはなり得ない。先の命題の逆は成立しない。*1

確かに「しゃべる」「聴く」は専用の訓練が必要なことだ。しかし、TOEICの平均スコアが512点の国において言えることは、「その次元に全く達していない」ということである。512点しか取れないというのは基礎の基礎すらない状況であり、しゃべる・聴くのトレーニングしたとて無意味である

TOEIC|プレスリリース|2014年度|日本人の平均スコアは512点、48カ国中40位にとどまる

野球選手を目指している者が筋トレを全くやっていないのを見てあなたはどう思うだろう?まさに、「コミュニケーション」というお題目を叫び続けている人はスポーツ選手に向かって「筋トレも走り込みもいらないからバッティングフォームだけやっとけ!そしたら打てるようになる!!筋トレ?あれはボディビルダーがやることや!」と言っているのと大して変わらない。過度に高度な単語・文法(筋トレ)は「学術界(ボディビルダー)」にしか必要はないが、単語・文法の基礎的な理解(筋トレ)なしにはどんな人にもなれない。換言すると、能力を伸ばす過程のどこかでそれ専用の教育が必要となるが、我々のレベルはそもそもその時点に至っていないので、基礎体力から問題を論じずには現状を突破できないのではないか、ということである。そしてまさに基礎体力の充実に徹しているのが日本の学校教育である。つまり、日本の学校教育で「コミュニケーションに関するトレーニングが足りていない」という一部の主張は一定程度正しい(実際に話すトレーニングは満足に行われていない)が、問題のポイントは「そこではない」し、「すべきことは他にある」ということだ。「あなたが英語ができないのは、あなたが悪いんじゃなくて、学校教育のシステムの問題ですよ」というのは聞こえもよいからそこにすがりつきたくなる気持ちもわからないでもないが、この手の言説は学習者に現実から目をそらすのに手を貸しているだけである。

ところで、先の記事の解説も記者が英語を分かっていないのか、分かっていない人に向けて苦心しているのか多少的外れになっている。

この「lazy」が「怠け者」と和訳された。確かにlazyは「怠惰な」、「のろまな」という悪い意味で用いられるが、 

ここで問題なのは「lazy」の解釈ではなく「Some」を正しく訳文に反映できなかったことだけである。someをつけることでここでは「日本人のサッカー選手全てが怠け者」と言っているわけではない、ということになる。ちなみにこの手のトリックを使った問題は大学受験始め、論理学を用いたテスト(公務員一種なり就職なり)では常識中の常識で、経験者で知らない人はいないだろう。例えばこのインタビューの後に正誤問題があって、その一つにひっかけとして「According to the interviewee, there are not Japanese soccer players who make an effort to study English.」という一文が紛れ込んでいて「間違い」と答えさせるというのがある種の定番である。(無論、原文にsomeがなければ正解)

では、どうするか(まずはTOEICのテストの点を取ることを考えながら)

高校生は下記の部分をセンター試験に読み替えてもらって構わない。なぜならセンター試験TOEICも基礎的なことをバランスよく問うテストであり、「しゃべる・聴く」に至る前の準備運動としては最適であるからだ。

自己紹介をしておくと、僕自身は日本人で、留学経験もなく、大学受験以外で塾も通ったことがなく、両親も日本人というドメドメな環境で暮らしてきた。だが、ノー勉で一回目は800点付近をマークし、(そのまま懲りずにノー勉で向かった)2回目で900点を超えた。テクニック的な部分は外すとして通ってきた道を振り返るとリーディング部分の得点を伸ばす方法は下記でしかない。

  • 単語を覚える
  • 文法・語法を理解する

はいはい、まだページ閉じないでください。ページを閉じようとしたあなたは、まさに現実から目をそむけようとしている。英文解釈?構文?長文読解トレーニング??笑えます。そんなレベルに達していないから600点もいかないのであって、長文読解トレーニングとやらは難解な、大学受験で言えば「明らかに指導要領の範囲を超えた」英文の読解に必要なものであって、TOEICのレベルでは全く必要ない。筋トレがつまらないように、単語・文法の基礎トレーニングもつまらないもの。ただ、ここには何の抜け道もないし、テクニックもない。ただゴリゴリやるしかない。それが現実。

しかし、だからと言って英文を読んで出会う未知の単語、解けなかった文法をただ覚えているだけでは時間の浪費。そんな時には必ず書籍を使うのが鉄則。

(人気の教材は下記から。アフィリエイトですので参考になったと思う方は下記からどうぞ。)

アルク2014年人気英語教材ランキング

オンラインサイトを勧めておきながらアレだが、書籍は人によって向き不向きがあるのは事実だ。例えば大きいところでいうと、単語帳には「長文を読ませるもの」と「単語と申し訳程度の例文が載っているもの」がある。個人的には長文に時間をかけたくなかったので、後者を選択したが、前者の方が文脈で覚えられるから合っているという人がいたのもまた事実である。もっと細かいところでいうと、デザイン(見た目)だけで「おえーっ」となって積み本になる人もいる。であるからこそ、まずは大きな書店に行って自分の目で「あ、これならできるかもしれない」というものを選ぶのが一番である。酷い本を外せば、内容は似たり寄ったりであるので、まずは「やれそうな」ところから手をつけて「出会う→暗記」というプロセスを動かすことがポイントだ。それで足りなくなったら高度な書籍を選べばよい。(そしてダメな本を見極めるのにはamazonalcがおすすめである。気に入ったデザインを見つけたあとに検索をして、売れていないorレビューが極端にひどい本を外せばいいのだ。)

おそらくこの2つをきっちりこなすだけで、すぐに高得点に達する。リスニングの部分も文法の理解が進めば、実は問いのリード文を読むだけである程度答えが類推できるものである。(例えばWhat 〜?で聞いているのだから答えは絶対に「名詞」になるはずだ、等の類推)それだけでも聞き逃した・聞けなかった問題への余裕ができる。そうすると自分のペースを乱すことなく最後の問題まで達することが可能であろう。

最後に最も重要なことは「自分のスタイルを確立すること」である。人それぞれ抱えている問題も、目指すべき道も、性格も全てが違うはずなのだから、定型の道などあるわけがない。おそらく努力をしているのにTOEIC・センターごときの点が取れていない人は「あれがいいらしい」「こうしたほうがいい」「こうやってあの人は成功したらしい」という自分としてピンときていないにも拘らず、それぞれの方法論の本質を理解せずにとりあえず模倣しているのではないだろうか。少しでも思い当たる部分があれば、まずは自分を見極めることをおすすめします。

と言いつつも・・・

外国人と英語でコミュニケーションをとる、というお題目は実はもっと細分化して議論をしなければならない。自分の意思を伝えるだけなら動詞と名詞をつなげればそれでよいのであって、別に正しい文法・語法などは誤解のない範囲であれば使う必要はない。言ってしまえば常に命令文で話せば文法的に間違えようがないのだ。もしくは文法がグチャグチャな上に"you know"を連発する恥ずかしい英語や"something like"でしか表現できない稚拙な英語を話せればよいというのであればフィリピンにでも行って英会話教室に通えばいい。 アメリカには英語どころかスペイン語ですら満足にしゃべれないような人々がうようよいるが、全く彼らは彼らで問題なく生活できてしまっている。それが現実だ。もしかして、みんなが叫んでいるコミュニケーションとはこの程度のものなのかもしれない。

ちなみに、今回対象にしている「英語の能力」は「人として信用され」「それなりの階級の人々の間でも笑われない」程度の能力ってことだったんだけどね、という最後の最後に前提を明かす大学受験で言えばまさに悪問のような展開で本日はお別れしたいと思います。

 

*1:無論、TOEICのスコアが取れていない人は英語ができない人である。対偶は常に真なり。